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CLIFFORD JORDAN|IN THE WORLD
CLIFFORD JORDAN|IN THE WORLD

村上龍『イン・ザ・ミソスープ(幻冬舎文庫)』を読みました。ここ数ヶ月、再読も含め「村上作品完全読破」を目指して手当たり次第に読んでいるのですが、『イン・ザ・ミソスープ』はなんだか後回しになっていました。タイトルがなんだかアレですからね。龍っぽくない。

期待薄で、ボケーっと読み始めたのですが、息つく暇も無く、どんどんのめり込み、あっちゅう間に読み終えてしまいました。残虐な性格の登場人物、暴力と殺人、グロテスクな描写...。『ピアッシング』や『オーディション』にも通じる「デンジャラス系」の作品です。

miso_soup

舞台は新宿「歌舞伎町」。主人公ケンジ(二十歳)の仕事は、外国人旅行者のアテンド。主に「風俗的な観光」を求めて日本にやってきたツーリスト専門のツアーアテンダントだ。年末の差し迫った12月29日、ケンジはアメリカ白人男性フランク(年齢不詳)からの依頼を引き受ける。

フランクの第一印象は悪くない。明るい性格でユーモアセンスも持ち合わせた、まあ「よくいるタイプ」のアメリカ人だ。ケンジは大晦日までの「三日間」をフランクに付き添うことにしたのだが、徐々に、少しずつ、フランクに対する「違和感」に気づいてゆく。

その「違和感」というのは、日本とアメリカの文化的な差異から生まれたモノではなく、言動/行動/表情/仕草といったフランク自身が醸し出す「不気味さ」から発生している。ケンジの心情は「あれ?何か変だぞ?」から「ん?ヤバイかも?」へと変化していく。ゆっくりと、確実に。気づくと、決して後戻りできない「最悪の状況」に自分が置かれている事に気づく。

残虐で鬼畜的だった危険人物フランク。想像を絶する「最悪の状況」に置かれたケンジ。それらを取り巻く歌舞伎町の怪しい空気。日本特有の異質な文化、社会の矛盾、秩序の崩壊。文字の積み上げを通して、村上龍は私たちに、そして我が国に対して、問題提起をしているのだ。

あとがきで村上龍は次のように語っている。「想像力と現実がわたしのなかで戦った。現実は想像力を浸食しようとしたし、想像力は現実を打ちまかそうとした。そういうようなことは、二十二年間小説を書いてきて初めてだった。」

という感じで、私に「強烈なインパクト」を残した小説でした。特に、ケンジの心情の変化、フランクが大量虐殺するシーンの描写、謎に包まれたフランクの素性が明らかになっていく過程にドキドキ。興味のある方はブックオフの「100円コーナー」で是非ゲットしてみてください。

book_off

さてさて、本日引っぱり出したのはクリフォード・ジョーダンのストラタ・イースト盤『イン・ザ・ワールド』。5人中5人はお気づきかと思いますが、今回は「イン・ザ・〜」繋がりですね(単純だなぁ)。フランク・フォスター(ts)とかフランク・ウェス(fl)でもよかったんですが(フランク繋がりね)、あまり面白そうな作品が無かったのでコレにしました。

まずは軽くC.ジョーダンのご紹介。シカゴ生まれのテナーサックス奏者クリフォード・ジョーダン(1931-1993)。マックス・ローチ(ds)やソニー・スティット(as)らとシカゴで活動した後、1957年にNY進出。デビュー作をいきなりブルーノートに吹き込みます。サン・ラー楽団でもお馴染みのジョン・ギルモア(ts)と残した『ブローイング・イン・フロム・シカゴ』ですね。

同年、立て続けに『クリフ・ジョーダン』『クリフ・クラフト』をブルーノートに吹き込みます。その後、リバーサイドに『スペルバウンド』、ジャズランドに『スターティング・タイム』『ベアキャット』などの「イケてる作品」を残していきます。

その後、ストラタ・イースト/ミューズ/スティーブル・チェイス/クリス・クロス等に吹き込みを続けました。好内容作品が多数あります。約40年も頑張ったC.ジョーダンですが、お世辞にも「めっちゃ人気がある」とは言えません。むしろ「通好みのB級テナーマン」といった位置づけでしょうか。男らしい音色、味わい深いフレージング、素晴らしい作曲能力と、個人的には「A級」だと思っていますが…。

1969年録音の本作『イン・ザ・ワールド』は彼の最高傑作とも言える一枚。サイドにはドン・チェリー(tp)、ケニー・ドーハム(tp)、ウィントン・ケリー(p)、リチャード・デイビス(b)、ロイ・ヘインズ(ds)などが参加しています。全4曲すべてをC.ジョーダンが書き下ろし、めっちゃ豪華なメンツを揃え、やる気満々で(たぶんね)吹き込みました。

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A1「ヴィエナ」。W.ケリーが奏でる感傷的なイントロで幕を開ける。序盤はゆったりとしたスロー・テンポでありながら、アンサンブルが徐々に加わるにつれて、演奏全体から異様な緊迫感が溢れ出してくる。C.ジョーダンが絶妙のトーンで加わり、気づくと、倍速のワルツ調のリズムに変化している。

C.ジョーダンのテナーは、太く、たくましく、勇敢で、何とも悲しく響き、聴く者の胸を突く。くぐもり、ザラついた音色に思わず耳を奪われる。続くD.チェリーのソロも格別だ。無規律に上下し、音程は外れ、過激で、高音が脳天に突き刺さる。抽象的で捉えどころのないフレーズが積み重なり、胸が痛々しく締めつけられる。悲しく、儚く、美しい。珠玉の一曲だ。

A2「ダグズ・プレリュード」。ミディアム・スローの優美なナンバー。4分47秒の短い演奏なのだが、W.ケリー/J.プリースター/C.ジョーダンが印象的な味わい深いソロを回す。見晴らしのよい丘の上から見渡した、彼方まで続く広大な大地。そんな情景が脳裏に浮かぶ、穏やかな演奏だ。

B面ではD.チェリーに代わり、K.ドーハムが加わる。手持ちのK.ドーハム・ディスコグラフィー(Claude Schlouch著)で確認すると、彼が短い生涯のなかで残した最後から二番目の演奏のようだ。端的ながら溌剌としたソロを聴かせてくれる。K.ドーハム・ファンにとっては晩年期の貴重な録音と言えるだろう。

B1「オウアゴウドウゴウ」。意味不明なタイトルが付けられた、ミディアム・テンポの4ビート。テーマを奏でるのはC.ジョーダン=W.ウェアの変則デュオ。リズム/アクセント/うねるようなメロディーにC.ジョーダンの作曲センスを感じる。前乗りのベースに乗って、ここでもC.ジョーダンがナイスなソロを展開。むせび泣くテナーに痺れる。

B2「872」。テーマを奏でるのはC.ジョーダン=K.ドーハム=J.プリースターのダイナミックな三管アンサンブル。重層化した音の波が押し寄せてくる。随分と変則的なリズムで奏でられているので拍子を取ってみると「8・7・2」と展開していることに気がついた。曲の構造をタイトルに冠したのだ。重量感のある混沌とした雰囲気のなか、キラリと輝くW.ケリーの軽やかなタッチが印象的に響く。

in_the_world_label
私の手持ちは白黒デザインの2ndプレス(1stは白ラベル)。機会があったら聴き比べてみたい。音質が著しく異なるようだったら、是非とも1stプレスをゲットしたいと思っている。

ちなみに、本作はC.ジョーダンが立ち上げた自主レーベル「フロンティア」に吹き込んだ音源だそうです。1969年の録音後、お蔵入り?資金不足?気まぐれ?で闇に葬り去られた後、ストラタ・イーストから1972年にリリースされました。もしかしたら、世に出なかった作品かもしれませんね。えらいこっちゃ。

という感じで、『イン・ザ・ワールド』大推薦です。『イン・ザ・ワールド』を聴きながら『イン・ザ・ミソスープ』を読んでみるのも「アリ」かもしれませんよ(笑)。ではでは、また次回。


CLIFFORD JORDAN|IN THE WORLD (amazonで試聴とCD購入できます)

Clifford Jordan(ts) Don Cherry, Kenny Dorham(tp) Julian Priester(tb) Wynton Kelly(p) Wilbur Ware, Richard Davis(b) Al Heath, Roy Haynes, Ed Blackwell(ds)
1969年録音

Side A
Vienna
Doug's Prelude

Side B
Ouagoudougou
872

vinyl details
STRATA EAST (SES1972-1)・STEREO・BLACK & WHITE