レコードを買い続けてしまう人のブログ。
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SUN RA AND HIS ARKESTRA|SLEEPING BEAUTY


前回の記事で取り上げたキズだらけの『オン・ジュピター』を入手した中古レコード店にて、かねてから探していた念願のサン・ラー盤に運良くめぐり逢うことが出来た。すこし前の話になるが、昨年の夏頃のこと。その時も馴染みの店員の方が「いりますか?」と声を掛けてくれたのだ。コンディションも問題なく、価格も手が届く範囲内だったので、迷うこと無く購入を決断することができた。

本作『スリーピング・ビューティ』の存在を知ったのは、いまから5年ほど前だった。イギリスのART YARDレーベルが、サン・ラー作品のCD/LP復刻を開始して間もないころ。ちょうど彼の音楽に興味を持ち始めた時期だった。ART YARDの復刻第三弾として日本に届いたその音楽を初めて耳にした時、胸の奥深くから込み上げてくるような高揚を感じた。もしあの時の出逢いが無かったら、サン・ラーへの興味や欲求も、今ほどは高まってはいないかもしれない。

復刻盤に何十回とレコード針を滑らせながら、サン・ラーに思いを馳せる時間を過ごしてきた。あぁ、なんて素晴らしい音楽なんだろう。繰り返し聴いても不思議と飽きるはことはなく、ますますその魅力へと引きずり込まれていくような作品だった。約5年の歳月を経て改めて鼓膜に響いた『スリーピング・ビューティ』と名付けられたサン・ラーの音楽からは、神秘的な美しさが静かにじわりじわりと、間違いなく確実に溢れ出してきた。



美しいピアノに穏やかなホーン・アンサンブルがそっと寄り添うA1「スプリングタイム・アゲイン」の冒頭からすぐさま彼の世界観が解き放たれる。ゆったりとリズムが踊り、内側から放射状に広がるように澄んだ空気が溢れ出してくる。徐々に柔らかな旋律郡が折り重なり合い、まるで宇宙遊泳するかのようなサン・ラーのエレピが、その波間をゆらゆらと漂いながら輝きを放つ。それらが一体となった豊かなハーモニーが静かに、そして淡々と流れていく。永遠を思わせるような感動的な音楽。本作のベストトラックだ。

続くA2「ドア・オブ・ザ・コスモス」は、サン・ラー愛好家としても知られるカルロス・ニーニョが率いる現行ジャズバンド「Build An Ark」が取り上げたことで再注目を集めたナンバー。クラップハンズとコーラスの掛け合い、ファンクの要素を含んだ黒々としたリズム、奔放に唸りを上げるホーン部隊、背後で響くギターのカッティング…。今から30年以上も前に録音されたとは到底思えない。サン・ラーの音楽に宿る、普遍的な格好良さが詰まった演奏。

B面には約12分にも及ぶ表題曲「スリーピング・ビューティ」が収録されている。ミディアムテンポに乗って繰り返されるメッセージは最小限かつシンプルでありながら、そこからは彼の音楽や自身の存在意義に対する、思想や根源的な理念が凝縮されているのを感じ取ることができる。"I wanna speak of… black beauty to you… Mmmhmmm… Mmmhmmm… sleeping beauty sleeping beauty sleeping…"。サン・ラーの音楽表現の幅広さに改めて驚かされるだけでなく、彼のことをジャズ・ミュージシャンと言うよりも、やはり音楽家と呼んだ方がしっくりくるのにも納得させられる。

本作の録音は1979年。前回の記事でも少し触れたのだが、この時期のサン・ラーの旺盛な制作意欲と非凡な独創性には目を見張るものがある。同年には9枚ものレコードが世に送り出されており、それらの音源に耳を傾けてみると、作品ごとに多種多様なアプローチが散りばめられていることに気付かされる。なかには容易に理解することが難しい極めてアヴァンギャルドな作品も含まれているのだが、本作においてはそういった難解な要素は限りなく少なく、彼が本来持っている純粋な美しさを率直に楽しむことができる。『スリーピング・ビューティ』と名付けられたこの音楽は、サン・ラーの同時代における重要な作品と言えるだけではなく、彼が残した膨大な音源のなかでも、迷うこと無く傑作の一つに挙げたい。

RIPPED FROM VINYL|SUN RA AND HIS ARKESTRA|SPRINGTIME AGAIN

SUN RA AND HIS ARKESTRA|SLEEPING BEAUTY
Recorded 11/1/1979

SUN Ra(p, el-p, org, vo) Michael Ray(tp, fl) Walter Miller(tp) Vincent Chancey(fh) Tony Bethel, Craig Harris(tb) Marshall Allen(as, fl) John Gilmore(ts, per) Danny Ray Thompson(bs, fl) Eloe Omoe(bcl, fl) James Jacson(bsn, fl, per) Disco Kid(eg) Richard Williams(eb) Harry Wilson(vib) Atakatune(per) Luqman Ali(ds) June Tyson and ensemble(vo)

SIDE A
Springtime Again
Door of the Cosmos

SIDE B
Sleeping Beauty

VINYL DETAILS
SATURN (11179)・STEREO・YELLOW LABEL・HANDMADE SLEEVE