レコードを買い続けてしまう人のブログ。
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BENNY GOLSON|GONE WITH GOLSON


窓を少し開けると、湿った空気と共に、しとしとと柔らかい音色。じっと耳を澄ましていると、何故だか心が安らいでいく。久しぶりに雨が降った。午後過ぎに起床したダラシナイ私は、吉祥寺へ繰り出そうと思い立ち、最寄りの駅へと足を向けた。

交差点で信号待ちをしていた少年。小さな傘、小さな帽子、小さな長靴。足元に出来ていた小さな水たまりで無邪気に遊んでいる。何とも微笑ましい光景だ。私にもあんな頃があったのだと、ほんの少し、ノスタルジックな気持ちになった。

何かの偶然だろうか。そんな雨の日に、私は以前から求めていた「傘のゴルソン」をようやく入手することが出来たのだ。ベニー・ゴルソンのNEW JAZZ盤『ゴーン・ウィズ・ゴルソン』。1959年の作品だ。レコード袋が濡れてしまわないように、慎重に小脇に抱え、私は吉祥寺を後にした。



A1「スタッカート・スウィング」。何年前だろう。馴染みのレコード店でパタパタとしていた私は、スピーカーから流れてきた旋律に思わず手を止めた。その美しい旋律はダイレクトに私の心へと響き、胸の奥底から哀感が込み上げてきた。爽快なリズム、鮮烈なテーマ、華麗なアンサンブル、小気味よいピアノ…。まるで、雷に打たれたかのような衝撃だった。

作曲はレイ・ブライアント(p)。アレンジはゴルソン(ts)だ。一度聴いただけで鼓膜に刻まれるであろうあまりにも印象的なテーマに続き、各ソロパートも実に充実している。カーティス・フラー(tb)が小刻みなフレーズを豪快に繰り出す。ブライアントはブロックコードを多用し、マイナー調の旋律を振りまく。ゴルソンの吹きっぷりも見事。迷うこと無く、本作のベストトラックだ。

A2「枯葉」。お馴染みのスタンダードへと展開。ゴルソンのアレンジャーとしての才能は同曲においても容赦なく発揮される。主旋律をリードするゴルソン。そっと寄り添うフラー。テーマの後半では、二者の絶妙なユニゾンが出現する。シンプルだけれど、秀逸なアレンジ。ソロ先発のゴルソンは、まるで歌うように哀愁を振りまく。

A3「ソウル・ミー」。ゴスペリッシュなムードが漂うミディアムテンポの4ビート。作曲はゴルソンだ。じわりじわりと溢れ出す哀愁に身を委ねているだけで、心が次第に澄んでゆくような演奏。ゴルソンのテナーは決して流麗ではなく、どこか自信がなさそうで控えめなのだけれど、そこがたまらない。ポール・ゴンザルベスと同一タイプのテナーマンだ。同曲のようなマイナー調のナンバーはまさにゴルソンの十八番芸。

B1「ブルース・アフター・ダーク」。B面の2曲はゴルソンのオリジナル。まずはスローテンポのブルース。タイトルを見て、あれ?と思った方も多いだろう。本作の約一ヶ月前に吹き込まれたフラーの大名盤『ブルー・スエット』の冒頭を飾った「ファイヴ・スポット・アフター・ダーク」へのアンサーソングだろうか。思わず、レコード棚から『ブルー・スエット』を取り出して聴き直してしまった。こういう、あれ?はとても楽しい。

B2「ジャム・フォー・ボビー」。ラストは躍動感あふれるスウィンギーなナンバー。原文ライナーによるとボビーとはゴルソンの奥さんの名前だそうだ。楽しいエピソードも記されていた。とあるクラブでボビーが呼びかけた。「早いナンバーをお願い!」と。ゴルソンは彼女の為に同曲を演奏したそうだ。各ソロイストの溌溂としたプレイが光る。ラストを飾るのに相応しい演奏だ。

フリージャズを聴き疲れた夜には、こういったモダンな作品が心地よく響く。窓を少し開けると、しんとした冷たい空気が入り込んできた。見上げると、白く輝く小粒の群れが、先を急ぐように舞い降りてくる。じっと耳を澄ますと、少年の小さな足音が聞こえる気がした。たまには雨も、悪くない。


BENNY GOLSON|GONE WITH GOLSON (concord music group.comで試聴できます)

Benny Golson(ts) Curtis Fuller(tb) Ray Bryant(p) Tommy Bryant(b) Al Harewood(ds)
1959年6月20日録音

Side A
Stccato Swing
Autumn Leaves
Soul Me

Side B
Blues after Dark
Jam for Bobbie

vinyl details
NEW JAZZ (NJLP8235)・MONO・DG・RVG・PURPLE・COATING COVER